山口勉著 日経BP社 199頁1,575円

「この店」というのは、「でんかのヤマグチ」、東京都町田市にある小さな家電販売店です。著者は1965年に同社を創業した社長です。大手量販店に囲まれて、どうやって商売をやっているのか、価格以外の何をどういう具合に打ち出しているのか、さまざまな方法を実施しています。中には滑稽なものもあります。おもしろい本です。お勧めの一冊です。いくつかご紹介します。

顧客層:主要な顧客層は50代後半から60代、80歳くらいのお客さんも少なくない。よく「若い顧客をつかまえなければダメだ」と言われるが、小さな店が若い客なんてつかまえられるわけがない。若い人は機動力がある。多少遠くても新宿や秋葉原に足を伸ばす。量販店を2~3店回って一番安いところから買うから、うちのような町の電気店は端から相手にしていない。

高齢者の方は遠くまで買いものに行ったり、何軒も店を回ったりしない。また、価格の安さよりもアフターサービスの方が重要だ。それなら、うちでも勝負できる。

イベント

お客様とできるだけ長くお付き合いができるように、さまざまな工夫を凝らしている。その一つが毎週末の店頭イベントだ。顧客リストに登録されているお客様に案内状を送り、来店者にはさまざまなプレゼントをする。例えば毎年9月は「サンマ祭り」。イベント会場でサンマを焼き、好きなだけ食べていただく。そして、お帰りの際にはサンマを三匹持って帰ってもらう。イベント内容は4週間ごとに入れ替わる。

「高売り」「厚利長売」

利は厚く、長く売る。ヤマグチが目指しているのは、売ったらそれでおしまいというものではない。お客様の生涯にわたる長期的な取引関係の維持だ。そのためには、利は厚くなければならない。高売りである。

家電量販店包囲網

「高売り」も「厚利長売」も、創業当初からではなく、1996年を転機とするものだ。この年コジマが町田に出店。その後ヤマダなど大手量販店が続々と進出し、3年後には6店になった。もうだめかと思った。なんとか頭を振り絞って、やっと考え出した生き残り策だ。

★量販店にできないことは何か

量販店は価格が安い、駐車場が広い、店も大きい、しかし、一番の特徴は価格が安いことだ。量販店では、高く売ることだけはできない。一瞬でひらめいたわけではない。年中考えているうちに、頭の中で考えがまとまってきた。じゃあ、量販店ができない「高売り」をやろうと思った。

★来店の理由、なければ作る

ヤマグチの外に看板には、こんな言葉が書かれている。(看板の写真が記載されている)

・コーヒーで一休み!!いかがですか

・急に雨が・・・傘をどうぞ

・急に気分が・・・救急薬、トイレをどうぞ

・小銭が・・・店内で両替をどうぞ

・携帯電話を忘れた。店内の電話をどうぞ

・AED装置設置

気軽に立ち寄ってもらえる立地ではない。どんなきっかけでもよいから、店に来てもらいたい。店に入ってもらわないと勝負にもならない。

 以上簡単にまとめてみましたが、いかがでしたか?

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