あつらえ・さしいれ

未来食堂にはイノベーションがいっぱいです。たった一人の企業でもイノベーションをいっぱいできるのです。「あつらえ」と「差し入れ」も未来食堂が行っているイノベーションです。

“あつらえ”

夜のゆっくりした時間帯に、お客様の希望する材料を用い、お客様の希望する料理法で料理する400円の小鉢です。流れはこんな感じです。

1.冷蔵庫の中身を書いた紙をお客様に渡す。
2・お客様は、それを見て希望する材料や、要望を伝える。
3.店主が作る。

この“あつらえ”によって、店とお客様に濃厚なコミュニケーションが生まれます。とは言ってもあつらえをお客様が頼みやすくする工夫が必要です。それは、

1.価格を明確化⇒400円
2.選択肢に制約⇒材料2点まで
3.小鉢限定
4.選択肢の可視化⇒冷蔵庫の中身リスト
5.ビジュアルで説明⇒あつらえの流れをマンガで説明
6.過去の事例を掲示

“さしいれ”

「自分が飲みたいものは何でも持ち込みOK。ただし半分は店に寄付」がさしいれのルールです。ビールが2本飲みたかったら4本持ってきて2本を寄付するのです。寄付された2本は誰が飲んでもよいのです。

 さて、“あつらえ”と“さしいれ”をご紹介しました。このふたつ、それぞれどんなメリットとデメリットがあるでしょうか。少し考えてみてください。自社ではどんなことができるでしょうか?

施工場所限定

近代ホームは横浜市の注文住宅メーカー、従業員約20名の会社です。この会社では車で1時間圏内に絞って住宅を施工しています。施工場所を限定しているのは、性能にこだわった「百年健康住宅」の良さを伝えるにはお客と接する密度頻度を高めるためです。日経トップリーダー3月号「特集『顧客感度』のいい会社 施主に家への思いをスピーチしてもらう」から、お客様とどのように接しているのかについて内容を要約してお伝えします。

・年末のあいさつ
20人の社員が総出で600軒の家に一軒ずつ挨拶して回る。建築から数十年たった家にも「お変わりありませんか」と声をかける。

・新春交流会
近代ホームで家を建てたお客と、社員や職人たちが一緒に餅つきをし、酒を酌み交わす。近代ホームで家を建てることを検討中の人も1割いる。

・着工式
①近代ホームの担当者が職人たちに施主とその家族を紹介する
②職人が一人ずつ施主に自己紹介する
③施主が「どんな思いでどのような家を作りたいか」スピーチする。

・社長が社員や職人に「お客様の心の声までしっかり聞いてほしい」と社員や職人に伝え続けている。

このようにエリアを限定し、お客様と接する密度を高めることによって新規受注はほぼ口コミによってまかなっている。狭いエリアで家を建てれば、家の仕上がりや施工時の評判などはすぐに口コミで伝わるからだ。「建てた家そのものが宣伝となり、そこに住む人自身が営業担当になってくれる」のだ。

いかがでしょうか。営業範囲を狭くすること、自社の場合にはプラスでしょうか、マイナスでしょうか?できるでしょうか?

『ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由』

小林せかい著 
太田出版 1400円+税、225頁

著者は、客席12席の定食屋「未来食堂」のご主人です。そんな人がなぜ本を出版しているのでしょうか。この本の「はじめに」にもそのようなことが書いてあります。「はじめまして。私は未来食堂の店主、小林せかいと申します。未来食堂は神保町にあるカウンター12席だけの小さな定食屋。『そんな小さな定食屋がどうして本を書いているの?』と不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません」

本を出している理由は、未来食堂にはいろいろな新しいシステムが取り入れられているからです。そして成功しています。ここではその新しいシステムのいくつかをご紹介します。

ただめし(まかない)

理由のひとつは、「ただめし」を食べさせるから。「ただめし」といっても「ただ」ではない。「ただ働き」と交換だ。「まかない」という名前で呼ばれるシステム。50分お手伝いをすると1食900円のランチ券をもらえる。

「まかない」をするのは、どんな人か。条件は「1度以上お客様として来店していただいた方」。料理の経験とか飲食店での経験は問わない。中学生から60代の方までくる。この状態で価値を生み出す。

これは修業時代の経験から来ている。これだと思う定食屋に飛び込み、オーナーに直談判「自分で定食屋を開きたいんです。無給でいいから3カ月だけ働かせてください」でも、その答えは「たった3カ月だけだったら教える方がしんどいから」何度も何度もそうやって断られた。そのたびに「やる気がある若者がやってきて無給でもいいから働くといっているのに、その労働力を有効活用できないのは、何か構造的な欠陥があるに違いない。3カ月、1か月、1日、いやいや1時間の参加であっても、プラスになることは絶対できるはずだ。

ということで、超短時間で働いてもらえるシステムを作ってしまったのです。人材不足を解消するひとつの手段として、短時間戦力化というのは魅力的だと思います。以下、システムのいくつかをまとめてみます。

・まかないマニュアル
事前にガイドを配布し目を通してもらう。ガイドはネットで誰でも見られるようにしている。

・ぱっと見てわかるようにする
説明しやすいように種類を限定する。メニューは1種類。お皿の種類も少ない。ボウルは大中小しかない。消毒用アルコールと洗剤の容器の色を変える。「×××と書いてあるけれど本当は△△△だから」というような入れ物と中身が違うようなことはしない。

・保存用タッパー
1種類。修行先のひとつである老舗仕出し屋で床磨きや洗い物をしていたときのこと。その店ではタッパーを100均などで買い足すため、タッパーの種類がバラバラだった。嵩張るし、合う蓋を見つけるのも一苦労。未来食堂ではタッパーは1種類で40個ほど。省スペースかつ効率的。

・やりたいことを聞く
「今日したいことはあるか」と最初に聞き、それに近いことをしてもらうようにしている。

いかがでしょうか?楽しめて役に立つ本だと思います。どうぞ書店で本を開いてみてください。