高橋伸夫著 日経BP社 1600円+税 244頁
この本では一貫して、成果主義ではうまくいかないと主張しています。
ひとつおもしろい話がありましたので紹介します。
●あるユダヤ人のお話
第一次世界大戦後、アメリカの田舎町でおこったことです。
その町ではユダヤ人排斥感情がとても強かったのです。
1人のユダヤ人が小さな洋服屋を開きました。
するとボロ服をまとった少年たちが店先に集まって、
「ユダヤ人!ユダヤ人!」と店主に向かって大声で囃し立てたのです。
店主のユダヤ人は、困ってしまったのですがいいことを思いつきました。
「私をユダヤ人と呼んだ者には、10セントあげよう」
と言って少年たち1人ずつに10セント硬貨を与えたのです。
大喜びした少年たちは次の日もやってきて、
「ユダヤ人!ユダヤ人!」と叫び始めました。
店主は、「今日は5セントしかあげられない」
と言って少年たちに硬貨を与えました。
次の日も少年たちはやって来ました。
こんどは、「これで精一杯だ」と言って、1セントずつ与えました。
少年たちは、2日前の十分の一しかもらえないことに文句をいい、
それじゃあんまりだともう二度と来なくなったといいます。
・どうしてなんだろう。
どうして少年たちは来なくなったのでしょう。
最初、少年たちは、「ユダヤ人!」と大騒ぎすることをおもしろがっていました。
しかし、ユダヤ人店主が、お金をくれるようになってからは、
お金をもらうことにより強い喜びを感じるようになったのです。
お金をもらう喜びで、「騒ぎ立てる」こと自体のおもしろさを見失ってしまったのです。
そこで、お金が思ったほどもらえないと分かった時点で、
「騒ぐことをやめてしまった」というわけです。
●これはモチベーション「動機付け」のお話です。
単純に、簡単にいうと、社員がおもしろがっている仕事に
成果型の報酬を与えるようにすると、仕事自体のおもしろさがどこかに消えてしまう
心配があると言っているのです。
●人は、金に迷う。
人はおもしろいからこそいろいろなことをするのです。
それが遊びであれ、勉強であれ、仕事であれ、そうなのです。
なにか、事を成し遂げること自体が楽しいものなのです。
しかし、その成し遂げることのご褒美としてお金が入ってくると、
そのつながりが狂ってしまうことがある。
そういう例がもっといろいろあると思いますがいかがでしょうか。