著者トム・ピーターズ 2200円+税 555頁
「飴と鞭」ということばがあります。
人を動かすには、「褒美と罰」が必要だということですが、
実はこのことば、あまり好きではありません。
人を動物のように表現し、
思い通りにしたいという意思がみえみえの感じがするからです。
で、同じことなのですが、この本に出てくるスキナーさんという人は、
別のことばを考えました。
・プラスの強化=褒美
・マイナスの強化=罰
そうして、「マイナスの強化=罰」については、
「マイナスの強化を繰り返すことは、戦術としても拙劣で、その効果は薄い」し、
「罰を受けた人は、それによって誤った行動をしなくなるかというと、そんなことはない。
どうすれば罰を受けなくてすむかを学ぶのが関の山だ」と言いました。
また、マイナスの強化がもたらす行動の変化は、
思ってもみなかった望ましからぬ方向へ向かうことが多いとも語っています。
「マイナスの強化=罰」はだめで、「プラスの強化=褒美」がよいと勧めたのです。
そこで、プラスの強化をうまく使うためには次の五項目が大切だといいました。
1.具体的で中身がある:経営の数値ではなく、行動を目標とする。
たとえば、「売上20%増」ではなく、
「2月15日までに岡山工場を生産態勢にもっていく」
(コメント)「売上20%増」では、具体的な行動につながりにくいです。
行動しなければ、数字につながりません。
ですから、この例の目標には、もっと小さく分けた目標がいると思います。
たとえば、1月31日までに機械設置とかです。
2.すぐする:バナナしかなければバナナをほうびにする。
フォックスボロという会社では、あるエンジニアが、
試作品をもって深夜社長室に飛び込んだ。
社長はその試作品をみて大いに喜び、なんとかこれに報いたいと思って、
あちこち探し、机の中からバナナを取り出すと「取っておいてくれ」と渡した。
以後同社では、最高の賞として「金のバナナ」バッジが与えられることになった。
(コメント)「褒美は立派なものでなければいけない」という考えが間違いで、タイミングこそが大切だというわけです。決算賞与などはなかなか効果が持続しないという考えもあります。
3.小さな成功に報いる:大きな成功というのはそうないのだから、
小さな成功でもまめに報酬を与える。
(コメント)ここで大切なのは、「小さな成功」をあたりまえのことだと思わないこと。
「小さな成功」も成功なのです。
そんなことは、できてあたりまえ、というのはこわいと思います。
4.経営者の関心:ほうびのかなりの部分は、
経営者からのさりげない関心という形をとるべきだ。
(コメント)「小さな成功」を成し遂げたと本人は思っているのに、社長は無関心。
そういうのはだめだということです。
5.予想外:ほうびが定期的、定型的になると、インパクトが次第に薄れる。
予想外の強化を間歇的(きまぐれ)に与える。
(コメント)慣れると効き目が薄くなるということです。
思いがけなさの演出、これは難しそうです。
以上の5項目ですが、やろうと思えばやれそうじゃないでしょうか。
このプラスの強化がうまくいくと、やらなくてはならない仕事のリストに、
自分からすすんですべき事柄を書きたしていくようになるのです。
つまり「やる気」がでてくる。
ということで試してみられませんか。