概要
一番簡単な経営計画
事業の将来のことを考えてみたいと思っても、日常業務に追われてなかなか時間をとることができないと思います。ところが、簡単に経営計画ができてしまう様式があります。A4用紙たった2枚です。中小企業庁の様式です。しかも作れば、税金が安くなり、金融支援が受けられるかもしれません。それは、「経営力向上計画に係る認定申請書」です。
「経営力向上計画に係る認定申請書」
この申請書を経済産業局長に提出して、認定してもらいます。内容は、
1.企業の名称
2.事業分野
3.実施時期
4.現状認識
5.経営力向上の程度を示す目標
6.経営力向上の内容
7.経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
8.経営力向上設備等の種類
の8項目で、A4用紙2枚に書くようになっています。
これを使えば、今まで時間がなくて将来のことなど考えられなかったのが、考えることができ、しかも紙にまとめることができます。おまけに、8の「経営力向上設備等」は、補助金に結びつくかもわかりません。
今すぐにでも、「経営力向上計画に係る認定申請書」でネット検索してみてください。詳しい内容がわかります。
申請書の業種別の記載例も掲載されています。製造業、卸・小売業、外食・中食、医療、介護、貨物自動車運送業、自動車整備、建設業、不動産業など多数あります。自社の業種を見てみると仕事のヒントが得られるかもわかりません。
また、「経営力向上計画」作ってみたい、申請してみたいと言う方は澤根までご連絡ください。
酒商山田:広島の酒屋
この記事は、『日経トップリーダー』11月号の特集「小さな会社の『戦わない経営』」の要約です。「酒商山田」の実施したことは、前項で紹介した内容の何にあてはまるでしょうか。考えながら読むと面白いと思います。
酒商山田の現社長で4代目の山田淳仁さんは、思い切った業態転換で家業を成長させた。1989年に会社を辞めて家業に戻ったとき、ビールとタバコが売上高の9割を占めていた。当時の売上高は1億5千万円。家族以外に社員1人、パート1人、アルバイト2人で、経営難が続いていた。珍しい日本酒の営業をしても、知り合いの紹介で新顧客を獲得しても同業者から攻撃される。そこで考えたのは逆の道を行くことだった。
商品を次々に追加するコンビニの逆は商品を絞ること、ディスカウント酒店の逆は無名の小規模酒屋の酒を定価で販売することだ。ビールを減らし、日本酒と本格焼酎に道を進めた。贈答用の酒に贈り手の思いを描いたオリジナルのラベルを提案し、飲食店に関しては、店が繁盛するためのアドバイスを提供した。日本酒が売上の90%になったのは10年後の2000年だったが、そこからの成長は早く、2004年には売上4億に達した。
澤根なりに前項目との関連を考えてみると、はっきりとわかりやすいのはビールを捨てたことで、これは、(8)の資源の集中でしょう。また、(1)では、外部の酒販売の現状を頭に入れて、(2)に関連しては、外部と戦うのではなく、日本酒と焼酎という新しい機会を発見したことでしょう。
『創造する経営者』
P.F.ドラッカー著 上田惇生訳 ダイヤモンド社 1800円+税、314頁
本書は、著者によると事業戦略についての世界で最初の本です。1964年の出版ですから、半世紀以上前のものですが、内容は十分今日でも使えるように思います。企業の現実について、大部分の人は知っているが、知っているだけでほとんどの人がそれらを経営に生かしていないことが「企業の現実についての仮説」としてあげられています。8つありますので、それらをご紹介します。自社に読み直して考えてみてください。
(1)成果と資源は企業の内部ではなく、外部にある
企業の成果を決めるのは、外部にいる顧客である。また企業の重要な資源は、科学技術から社会、経済、経営にいたる知識である。それらは、企業の外部にある。企業活動とは、外部にある資源、すなわち知識を、成果に置き換えることである。
(2)成果は、問題の解決ではなく、機会の開拓によって得られる
(3)成果をあげるには、資源を問題にではなく、機会に投じなければならない
機会の開拓とは、なすべき仕事を見つけ、それに資源と活動を集中することである。企業にとっては、問題の解決をしないわけにはいかないが、それへの資源の配分は最小限にしなければならない。
(4)成果は、有能さではなく、市場におけるリーダーシップによってもたらされる
リーダーシップを発揮できる市場の一分野、顧客の一部分、技術の一応用を見つけ、そこに資源を集中させる。商品だけではなく、サービス、流通、立地、商品の組み合わせなどがその対象である。
(5)いかなるリーダーシップも、うつろいやすく短命である
企業はリーダー的な地位から、その他大勢に簡単に落ち込む。それに備えて、新しいエネルギーと方向性を手にしなければならない。
(6)既存のものは古くなる
あらゆる意思決定と行動がそれを行った瞬間から古くなり始める。経営者は、過去を正しい状態と思いがちであるが、それは過去の現実にすぎない。だから過去の状態にしゃにむに戻そうとしてはならない。企業とその行動、商品、サービス、流通を新しい現実に合わせて変化させなければならない。
(7)既存のものは、資源を誤って配分されている
顧客のごく一部が売上と利益の大半をしめることがよくある。同様に一部の営業部員が売上と利益の大半を稼ぐことも多い。資源とコストのほとんどは、これら稼ぎの多い部分ではなく、そうではない部分に注がれる。営業マンのほとんどの時間が、稼ぎの少ない商品や地域に充てられる。会議の時間の大部分が既存の問題の記述に充てられる。
(8)業績の鍵は集中である
業績をあげるには、大きな利益を生む少数の製品やサービス、顧客に集中しなければならない。
以上ですが、澤根なりにごく簡単に読み替えるとたとえば次のようになります。
(1)外のことに関心を持ち、学べ
(2)(3)利益が得られそうなところを探して目を向けろ、そこにお金と人を注げ
(4)自社が力を発揮できる小さなマーケットを見つけてそこに力を注げ
(5)今うまく行っていても長くない、次を考えろ
(6)自社のルールにあてはめて何かを考えるときそれでいいのか、再考しろ
(7)今忙しくてたまらないところは、稼げているか考え直せ
(8)何を捨てなければいけないか考えろ。