ある大学教授が、ちょっと実験してみました。
クリスマスカードを、まったく知らない人々に送ったのです。

少しは返事が返ってくるかなと思っていたのですが、
山のように返事が来てびっくりしたのだそうです。

●人の行動には、いくつかのルールがあります。
そのルールは、複雑な人生をなるべく簡単に済ませてしまおう、
なるべく考えずにすませよう、という人生の本能のようなものです。

●その、ルールのひとつが、「返報性のルール」です。
ルールというよりは本能といった方が正しいかもわかりません。
体が勝手にそのように反応してしまうからです。

●返報性のルールとは、
「他人が何かこちらにしてくれたら、こちらも似たようなことでお返しをしなければならない」
というものです。

世の中、返報性のルールの塊です。
お中元、年賀状、もっと身近な例では、あいさつ。
こんにちは、とあいさつされたら、こんにちは、とこたえます。
何も考えないで。

返さなかったら、変な奴、と思われてしまうかもしれません。

返報性のルールこそが、人間を人間たらしめているのだ、という人もいます。

●ある宗教団体が、最初アメリカで募金活動をはじめたとき、
ほとんど募金に応じてくれる人はいませんでした。

募金をしている人たちの姿かたちがあまりにも変で、
嫌悪感さえ感じるものだったようです。

しかし、この宗教団体は、嫌悪感をさえ、克服する方法を開発したのです。

まず、ねらいをつけた人に、本、あるいは、花をプレゼントとして渡すのです。

突然渡されて、要らないと言いはっても、
「プレゼントですから」と言い張り、返させてもらえません。

それから、寄付金を要請するのです。

この方法は、おそろしいまでの成功をおさめ、
宗教団体は、大発展したのだそうです。

返報性のルールは、嫌悪感さえ押さえこんでしまうのです。

●第一次世界大戦のときのことです。

あるドイツ人兵士が敵の塹壕に侵入し、敵の武器を取り上げ捕虜にすることに
成功しました。兵士の任務は捕虜を連れて帰り敵情を尋問することです。

ところが、突如とらわれの身になった兵隊は、
このときひとかけらのパンを持っていました。

このパンを、なんとドイツ兵にあげたのです。
ドイツ兵は、いたく感激し、自分の任務を果たすことができず、
そのまま自分の陣地に帰ってしまいました。

かなり強烈な返報性のルールです。
これで連想するのが、
「右の頬をぶたれたら、左の頬をだせ、下着を要求されたら上着もやってしまえ」
(マタイの福音書5-7)ということばです。

要求されるよりも早く、相手に与え、返報性のルールにしたがわせろ、
という意味かなとおもってしまうのですが、考えすぎでしょうか。

● 返報性のルールは、ビジネスでもさまざまな面で使われています。
無料試供品もそのひとつです。

ネットワークビジネスで急成長したある会社は、バッグにいっぱい自社の商品を
つめて、一定の期間無料で使用してもらうのです。

そうするとその期間終了後、客は注文しなければ悪い、
という感覚になって注文する。それで大きくなった。

この返報性のルール、いくらでもビジネスで応用できそうです。

一番簡単なのは、お客様、あるいはお客様候補に、
何をプレゼントすることができるか、を常に考える。

住所をもらいたいとか、来店してほしいとか、
何かしてほしければ、まずプレゼントする。などです。

参考:「影響力の武器 -なぜ人は動かされるのか」ロバート・B・チャルディーニ 誠信書房

 

 

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