『七帝柔道記』をいう小説が良く売れているようです。北海道大学の柔道部のお話なのですが、主人公が2年生になって、新入生を勧誘する場面があります。柔道部は人気がなくて希望者が少なく、しかも、練習が厳しすぎてやめていく者が多い。このままでは衰亡の一途だから、なんとかして新入生を入れなければいけない。
『君たちの大学生活4年間を北大柔道部に預けてくれ』というまともなチラシも作るのですが、高校の柔道人口が激減しているので、これだけでは、多くの入部は望めない。
そこで、話がむちゃくちゃになります。
【柔道サークルYAWARA】、【北大格闘技研究会】、【ボディビル同好会】、【異種格闘技戦を考える会】、【プロレス技術普及委員会】などと勝手に名乗り、適当なビラを大量に作ってばらまきます。そして、たとえば、【柔道サークルYAWARA】のビラには、女っぽい丸文字で「月曜と水曜、金曜の週に三回だけ、体育会柔道部の練習の後にちょっとだけ道場を借りて練習します。練習時間はたったの1時間だけ・・・」、偽サークルのビラの共通点は「週三回」、「練習一時間」「女子学生がいっぱい」というものです。練習がきつくない、あまり拘束されない、という事実とはまったく違うことを書きます。
偽ビラ作戦は大成功で、毎日毎日見学者がひっきりなしでした。練習後、強引に夕飯に連れて行き、かき口説く。出身校、学部、身長と体重、住所と電話番号を書かせる。逃げられても下宿やアパートに引っ張りにいくためだ。一度来て、来なくなったら、教室まで行って引っ張ってくる。
無法の限りを尽くして、見学者を増やす、来たものはフォローする、という作戦です。そんなことしていいのか、と思われる方もいっぱいいらっしゃると思うのですが、いいか悪いはひとまず置いておきましょう。
新入部員の獲得は、私たちの場合の新規顧客、新規見込み客の獲得ですが、もちろん、こんなでたらめな手は使えません。お金を使っていただかなければいけないのですから、特に信頼が大事です。ウソをついてはいけません。
しかし、見習うべきは、見込み客をたくさん引っ張ってくるということです。主人公たちの偽チラシでは、真実とは異なっていますが、「体を鍛える」というところは共通です。まったく興味のない人は来ないだろうという工夫が感じられます。
新規の顧客を獲得できなければ、売上は減っていきます。お客様は、去っていくし、年を取るし、ですから、必ず既存客からの売上は減少します。
北大柔道部の主人公たちが、頭を絞って、方法はでたらめだけれども、まじめにとりくんで新入生を勧誘したように、なんとか頭を絞って新規顧客を獲得したいものです。
しかし、その前に、「新規顧客を獲得する」ことが重要であるとしっかり意識しなければいけません。これが大きな目標です。大前提です。柔道部員たちは、この点に迷いはありませんでした。みなさまは、いかがですか?新規顧客獲得は、重要ですか?
では、次に新規顧客獲得のために何をするか?柔道部員たちのように、とにかく、何が何でも見込み客に来てもらうというのもひとつの戦略です。一方、有望な見込み客だけに来てもらって、丁寧に対応し、獲得率を高めるというのも立派な戦略です。
ひとつ、考えてみましょう。