ダニエル・ピンク著 講談社 275頁1785円

著者のダニエル・ピンクは、出す本出す本が世界的なベストセラー、ロングセラーになっています。2002年の「フリーエージェント社会の到来」、2006年「ハイコンセプトを考え出す人の時代」、2010年の「モチベーション3.0」、そして今回の本はセールスを取り上げています。この本で語られているのは、「売り込みしない、売上の上げ方」、「売り込みしない評価の上げ方」です。おもしろいものをいくつかご紹介します。

 実は天性のセールスパーソンなどいない。誰もが生来、セールスパーソンだからだ。みな同じ人間である以上は売り込むという本能を備えているので、人を動かす術の基本は誰でも習得できる。本書では、その特徴や方法について述べる。

全員がセールス

ソフトウエア会社アトラシアンの社長は、「わが社にはセールスパーソンは1人もいない。全員がセールスパーソンだからだ」と言う。同社のセールスは潜在顧客が製品のトライアル版をダウンロードすることで始まる。するとその何人かは、アトラシアンのサポートスタッフに問い合わせの電話をかける。サポートスタッフは売り込みをかけたりしない。顧客がソフトウエアを理解する手助けをするだけだ。エンジニアの仕事は、顧客のニーズを見つけ、製品がどのように利用されているのかを理解し、顧客を感動させ買う気にさせるような独自の特徴を備えた製品を構築することだ。

対比の原則

「わたしの目は見えません」

リーブズという伝説的な広告業者が、公園に座って金を乞う一人の男を見た。金を恵んでもらうためのカップの側の段ボールには「わたしの目は見えません」と書かれていた。カップの中には、コインが数枚しか入っていなかった。

リーブスは、「自分は広告に詳しいので、ほんの少し文字を加えるだけで施しを増やせるはずだ」と告げた。男は申し出に応じた。リーブスが付け加えた言葉は次の通り。

今、季節は春なのに

看板の全文はこうなった

今、季節は春なのに、わたしの目は見えません。

まもなく、カップは現金であふれかえった。

「季節は春なのに」ということばで、公園の人たちは自らの現実と男の現実とを比較して心を動かされたのだ。

(サワネ>ほんのちょっとした表現でチラシなどの効果が劇的に変化する例です)

目的が業績を高める

ある大学のコールセンターでは、大学奨学金への寄付を募る電話を卒業生にかける。電話するスタッフを3グループに分けて、電話開始直前の5分間に、それぞれに文書を読ませた。1)個人的利益=セールススキルに関するもの、2)目的=奨学金を得た学生がいかに助かったかという体験談、3)個人的利益とも目的とも関係のない話の3通りだ。

どのような結果になったか?

架電件数、募金額ともに、2)の目的グループは、1)のグループの倍以上だった。

 体験談を読むことによって、担当スタッフにとって仕事が人間味を帯び、目的をもてるようになったのだ。この仕事を通じ、他の人の人生を向上させ、世界も向上させることができると感じることができたのだ。